宮崎県日之影町の中山間で牛の放牧に取り組む繁殖農家、岩田篤徳さんを訪ねました。
牛舎から近隣の放牧地に向かう「出勤」から同行。16頭の繁殖母牛とともにゆっくりと集落の道を歩いて行きます。岩田さんによれば、いつもおしゃべりしているような仲良しもいれば、顔を見合わせればすぐにケンカになる関係もあるとのこと。
放牧地は約10ha。近隣で管理が行き届かなくなった山林や竹林を借り、木を切り出し、地形を残したまま草地に変えていったもの。十数年前に始めた頃には芝の定着に苦心したそうですが、今は十分な量が確保できるとのこと。冬季の1〜3月を除けば、粗飼料はすべて放牧でまかなえるそうです。何よりも印象的だったのは「のびのびとした牛の雰囲気」。岩田さんによれば、生産コストは下がり、作業量も軽減され、牛は健康でお産も軽くなるとのこと。考えてみれば、自然の摂理にかなったことである訳です。
畜産を取り巻く環境が複雑化していく中で考えるべきことは、それぞれの立場から多岐にわたる状況です。岩田さんと同じ形態で誰もが取り組めるわけではありません。ただ、中山間の特性を活かした利点を活用するモデルであることを実感しました。人間の農という営みと、中山間の環境の適切なマッチングとでも言えばいいのか、世界農業遺産の趣旨と通底しながら合理的な農業経営にも着実につながります。もう少し勉強を深めたいと思います。
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